研究概要 |
胎齢16日のマウス胎児頭蓋冠の骨形成領域の外側より、細胞増殖活性の高い領域(前骨芽細胞)、アルカリフォスファターゼおよびオステオネクチンが発現する領域(未熟な骨芽細胞)、オステオポンチンを発現する領域(成熟骨芽細胞)の分布を認め、外側から内側に向かって分化度が高くなっていることを確認した。特に縫合部では骨の末端が重なり合っているため、高い細胞増殖活性が認められた。Fgfr1,Fgfr2およびFgfr3のin situ hybtidizationを行った結果、このすべてのFgfrが骨形成領域に発現していることが確認された。Fgfr2の発現パターンは細胞増殖のパターンとほぼ一致し、Fgfr2が前骨芽細胞で発現されていることが示唆された。Fgfri1の発現ドメインは細胞増殖の高い領域のすぐ内側に存在し、アルカリフオスファターゼとオステオネクチンの発現パターンとほぼ一致した。また、Fgfr1の発現はオステオポンチンの発現と一部重なることがdouble labelled in situ hybridizationにて観察された。これ上り、Fgfr1は未熟骨芽細胞から成熟骨芽細胞に発現していることが示唆された。さらに子宮外胎児手術法にてマウス胎児の縫合部皮下にFGF2ビーズを挿入して分化を誘導したところ、オステオポンチンと共にFgfr1の発現が誘導された。これらの結果から、Fgfr2の情報伝達は骨芽系細胞の増殖に関係し、Fgfr1の情報伝達が骨芽細胞の分化に関わっていることが示唆された。一方、Fgfr3は骨基質の存在する部位ではFgfr2に相似した発現パターン、すなわち外側に発現を示したが、縫合部での発現は非常に低かった。また、Fgfr3は頭蓋冠の基部を裏打ちしている軟骨にも発現しており、骨細胞の複雑な分化段階、および組織間相互作用が示唆された。
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