シェーグレン症候群、(以下SSと略す)特異的な診断・治療法の開発を目的として、SSの自己抗原・α-fodrinのTおよびB細胞エピトープの同定を試みた。 ヒトα-fodrin cDNAより合成したGST融合リコンビナント蛋白を用いたT細胞増殖反応の結果から、T細胞エピトープはN末を含む約120KD、およびμ-カルパインの切断部位を含むドメイン11、12に存在することが示唆された。さらに詳細な検討を加えるために、抗原刺激後のT細胞と唾液腺浸潤T細胞をSSCP解析した後、T細胞レセプターCDR3領域の塩基配列を同定したところ、N末領域のリコンビナント蛋白に対して増殖するT細胞は、唾液腺浸潤T細胞と同様なクローンである可能性が考えられた。これらのことより、T細胞エピトープはN末領域に存在することが示唆されたので、N末を含む約120KDに相当する領域に対して合成ペプチドを作製した。合成ペプチドのT細胞増殖反応を検討したところ数種のペプチド断片に優位な増殖反応が認められた。さらに、α-fodrinに反応するT細胞株を樹立するために、反応を示したペプチドを抗原とする限界希釈法にてT細胞クローンの樹立を試みている。今後、樹立したT細胞クローンの唾液腺上皮細胞に対する細胞障害活性、サイトカイン産生能などの機能を検討するとともに、CDR3領域のアミノ酸配列を明らかにし、治療への応用を試みていく予定である。SSに特異的な診断法の確立を目的として、自己抗体が認識するB細胞エピトープについて検討した結果、モデルマウス血清中のN末領域に対する自己抗体価は病態と相関することが判明した。今後は、さらに感度が高く多数の検体を簡易に検出するために、バキュロウィルスに発現させたα-fodrinリコンビナント蛋白によるELISA法の確立を試みる予定である。
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