bHLH型転写制御因子によるラット味蕾細胞の分化制御機構の解明

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10770992
• 研究機関: 九州歯科大学
• 研究代表者: 瀬田 祐司 九州歯科大学, 歯学部, 講師 (90291616)
• キーワード: 味蕾 / Mashl / bHLH型転写制御因子 / ラット

研究概要

RT-PCRの結果より、Mashlの発現は味蕾を含んでいる有郭乳頭・葉状乳頭・茸状乳頭上皮のみに認められ、味蕾を含まない舌上皮には認められなかった.さらにin situ hybridizationの結果では、味蕾におけるMashlの発現は味蕾の基底細胞(IV型)だけに認められ、他の紡錘形をした味蕾細胞(I型,II型,III型)には認められなかった.味蕾の基底細胞は他の味蕾細胞(I型,II型,III型)に分化すると考えられていることから、味蕾におけるMashlの発現が味蕾細胞の分化過程の初期の段階でおこっていることが示唆された.
舌咽神経を切断すると、術後2週で有郭乳頭から味蕾は完全に消失し、術後4週で味蕾の再生が観察された。その時のMashlの発現を検索すると、味蕾の消失時にはMashlの発現は認められず、再生時には再び発現が認められた。
発生期の舌上皮におけるMashlの発現を検索すると、胎生16日の舌からMashlの発現が認められ、それ以前の舌(胎生14日)からはMashlの発現は検出されなかった。電子顕微鏡で胎生期の舌を検索すると、胎生16日に舌咽神経が初めて舌上皮に侵入しているのが観察された。
舌咽神経切断による有郭乳頭の味蕾の消失・再生時におけるMashlの発現の変化と発生期の舌上皮におけるMashlの発現から、味蕾におけるMashlの発現は神経による支配が必要であることが示唆された.
現在、その他のbHLH型転写制御因子の発現と、培養舌上皮細胞に発現させるためのMashlの発現ベクターを作成中である。

研究成果

• [文献書誌] Tandler,B.,Y.Seta,and C.J.Phillips: "Cytomegalovirus infection in the submandibular and parotid glands of an African grass mouse(Arvicanthus embeensis)." J.Submicrosc.Cytol.Pathol.30. 207-216 (1998)
• [文献書誌] K.Toyoshima,Y.Seta,S.Takeda and H.Harada: "Identification of Merkel Cells by an Antibody to Villin" Journal of Histochemistry & Cytochemistry. 46(11). 1329-1334 (1998)
• [文献書誌] K.Hamasaki,Y.Seta,K.Yamada,and K.Toyoshima: "Possible role of serotonin in Merkel-like basal cells of the toste buds of the frog,Rana nigromaculata." Journal of Anatomy. 193. 599-610 (1998)
• [文献書誌] H.Harada,T.Mitsuyasu,Y.Seta,Y.Muraoka,Toyoshima.K,S.Yasumoto: "Overexpression of bcl-2 protein inhibits terminal differentiation of oral keratinocytes in vitro" Journal of Oral Pathology & Medicine. 27. 11-17 (1998)
• [文献書誌] Y.Seta,T.Toyono,S.Takeda,K.Toyoshima: "Expression of Mash1 in basal cells of rat circwnvallate taste buds is dependent upon gustatory inneruation" FEBS Letters. 444. 43-46 (1999)