Streptococcus gordonii DL1株は、N-アセチルノイラミニルα2-3ガラクトピラノースを末端に持つ糖蛋白に特異的に結合するレクチン活性があり、それに関連していると思われる抗原(Hs抗原)を分離・精製し、抗体を用いたスクリーニングにより本抗原をコードする遺伝子(hsa遺伝子)のクローニングを行ってきた。この研究では、Hs抗原の分子生物学的性質をさらに明らかにするために、クローニングに引き続き、クローン化されたDNAの塩基配列決定、この遺伝子をknock-outした変異株の分離、大腸菌による発現産物の性質の解明を行った。 hsa遺伝子の塩基配列より、この遺伝子は2178アミノ酸からなるセリンに富んだポリペプチドをコードしていることが推定された。また、この遺伝子をhomologous recombinationによりknock-outしたDL1株由来の変異株は、Hs抗原に対する抗体との凝集能、赤血球凝集活性、シアル酸含有糖蛋白との結合能の何れも欠如していることを確認した。しかしながら、hsa遺伝子あるいはそのdeletion mutantの大腸菌による発現産物の検出をウェスタンブロットにより試みたところ、検出された蛋白のサイズと遺伝子から推定されるそれとが一致しないなどの問題点があることが判明した。今後この点を解決し、hsa遺伝子がHs抗原の構造遺伝子であるということを一層明確にするための研究を計画中である。
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