成人性歯周炎原因菌であるPorphyromonas gingivalisは、偏性嫌気性、グラム陰性桿菌であり、人工培地で成育するには、ヘミンを要求し、また血液寒天培地上では溶血性を示す。本菌種の場合、過剰のヘミンが蓄積され黒色集落を形成するが、この性質の欠損している変異株の病原性が低下していることから考えて、ヘミンの獲得が病原因子の一つとして歯周炎の病態発生に大きく寄与している可能性が考えられている。 当該研究では、本菌のヘミン獲得に大きく関わっていると思われる赤血球溶血素をコードしている遺伝子の検索を行っている。現在までに、大腸菌において赤血球溶血活性を発現する約2〜8Kbの遺伝子断片を28種類得ており、これらのサブクローニングが完了した。サザンハイブリダイゼーションの結果からこれら28種類のなかには、Porphyromonas gingivalis W83株における既知の各種プロテアーゼ遺伝子に相当するクローンは含まれていないことが確認されている。現在そのうち13種類の遺伝子配列の検索が完了した。これらの配列結果から想定されるアミノ酸配列とデータベースに登録されている蛋白との相同性を解析したところ、これらのクローンからは赤血球溶血素あるいは赤血球溶血に関わると推測される酵素などと相同性のある配列は得られなかった。従って、新規の配列のクローンである可能性が考えられる。 今後さらに残り15種のクローンの遺伝子配列の検索を進める。また現在のところ、常法においてはin vitroで溶血活性を測定するのが困難であった。そこで、溶血活性のより高感度な測定法の開発を行う予定である。
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