我々は、Porphyromonas gingivalisの主要な定着因子とされている線毛の付着あるいは凝集に関する機能に着目し、他菌株の主要線毛タンパク質(フィンブリリン、FimA)の遺伝子(fimA)による形質転換が線毛の形成やその性状にどのような影響を及ぼすかを検討した。 研究ではP.gingivalis381株のfimA_<381>をプラスミドベクターpYH420に結合し得られたリコンビナントプラスミドpYHF1をW50、ATCC33277、BLO-1、O-131、BH18/10およびYH522の各株に伝達し、それらの菌株でのfimA_<381>遺伝子の発現状況ならびに血球凝集能およびActinomyces属やStrptococcus属との共凝集能を宿主株のそれと比較した。 形質転換体におけるFimA_<381>発現量は、YH522およびO-131で多量の発現が認められた。一方元来381株と抗原的に交差性を有する線毛を持つ33277およびBH18/10では、前者は発現量に変化は認められず、後者は増加した。なおW50での発現量はYH522に比較して低かった。 さらに、形質転換株に対して電顕的な検索を行ったところ、33277株を除くFimA_<381>を新たに発現した株では各菌株の保有する線毛とは区別可能な線毛様構造物の発現が確認された。また、これらの菌株では、宿主株が本来示す共凝集活性ならびに血球凝集活性が低下していた。 P.gingivalisにfimA_<381>を形質転換することで発現した線毛様構造物かfimA_<381>のドナーである381株線毛と異なる性状を示したことから、付着因子としての線毛を修飾する分子としてfimA_<381>以外の因子の存在が示唆された。
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