研究概要 |
我々は、骨芽細胞様細胞株MC3T3-E1において2つのエストロジェン(E)受容体(ERα、ERβ)依存的にEによって発現が制御される遺伝子群を解析する過程で、c-fosおよびconnexin43(Cx43)の各遺伝子プロモーターが、それぞれのERにより異なった制御を受けることを見い出した。 MC3T3-E1にERαを強制過剰発現させた状態で17α-Estradiol(17αE2)、17β-Estradiol(17βE2)、Tamoxifen(Tam)やRaloxifene(Ral)を作用させた場合、これらはすべて両遺伝子プロモーターを活性化し、17βE2またはTamによる活性化は純アンタゴニストであるICI164,384(ICI)の共存により完全に抑制された。一方、ERβを強制過剰発現させた場合には、TamやRal、およびICIは遺伝子プロモーター活性を上昇させたが、17αE2や本来のリガンドである17βE2は有意な作用を示さなかった。また興味深いことに、17βE2はTamあるいはICIによって上昇したプロモーター活性を用量依存的に抑制した。すなわちこの場合、従来アゴニストとしての作用のみが考えられてきた17βE2がアンタゴニストとして作用していることになる。一方、この現象は骨芽細胞以外の細胞株では認められなかった。今回用いたプロモーターには典型的なE応答配列(ERE)は存在しないことから、以前に報告されているようなER以外の転写因子を介した機構が示唆される。そこでc-fosプロモーターに関して、それを段階的に短くして、ERβを過剰発現させたMC3T3-E1におけるTamの効果を調べた結果、その活性化に重要な部位が少なくとも2箇所存在することが示された。 本研究の成果は、骨特異的に作用し副作用の少ないE製剤の開発に寄与することが期待される。
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