研究概要 |
1. 咀嚼障害による脳組織変化と脳内メタロチオネイン(MT)-III発現量の解析について (1) 3〜4週齢マウス(ddY,♂)の下顎臼歯を左右1本ずつ抜歯した群(2)無処置群(1)(2)それぞれを固型飼料を与える群と,粉末飼料を与える群の4群のマウスを用意し,6ヶ月飼育後X線撮影にて骨格の変化を調べたが,どの群も骨格に違いは見られなかった。また,各群を3ヶ月,6ヶ月飼育後,海馬,線状体,大脳皮質よりRNAを抽出し,MT-IIImRNA量について解析中である。 2. 各種神経伝達物質によるMT-III発現量の変動についての解析 培養グリア細胞株(VR-2g,マウス由来)を用い,ドパミン(DA)添加時のMT-IIImRNA発現量の変動をRT-PCR法にて解析した結果,100μM添加時に,無添加時の約2倍量発現が増加していた。そこで,MT-IIImRNAの誘導がDAレセプターを介するものであるかを検討するため,D1,D2レセプターアゴニストおよびアンタゴニストを用いた。アゴニストによるMT-IIImRNAの誘導,およびMT-IIImRNA誘導へのアンタゴニストによる制御効果はみられなかったので,MT-IIImRNAの発現はDAレセプターを介するのではないと考えられた。また,DΔの他にノルアドレナリン,DAの前駆物質であるL-DOPA,神経毒性が強いと言われているDAの誘導体6-ヒドロキシドパミン(6-OHDA)添加時(0〜200μM)においても,MT-IIImRNAの発現量の変動を調べたところ,6一OHDA(50μM添加時に誘導がみられた。さらに,抗酸化物質であるグルタチオン,ア不コルビン酸,ビタミンEをDA添加時に同時に添加すると,MT-IIImRNAの発現誘導が抑制きれた。以上のことから,DAや6-OHDAにより発生する活性酸素によってMT-IIImRNA発現が調節されていることが示唆され,本研究において,MT-IIIの抗酸化的役割が期待できる結果を得たといえる。
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