本研究は唾液腺に存在する糖輸送体の種類を同定し、各種刺激に伴う糖輸送体(GLUT-1〜5、SGLT-1)の動態とその機能発現機序及び病態を解明することを目的に行うもので、本年度は下記の成果を得た。 1) 糖輸送体の耳下腺における局在 ラット耳下線より分画した管腔膜(APM)、基底膜(BLM)、細胞内顆粒膜(ICM)をSDS-PAGEに供し、ニトロセルロース膜に転写後、特異的抗体である抗GLUT-1〜5抗体、抗SGLT-1抗体を用いてウエスタンブロッティングにて糖輸送体の局在を検索したところ、GLUT-1はAPM、ICM及びBLMに、GLUT-5はBLMに、SGLUT-1はAPMとICMに発現していることが認められた。 2) 刺激に伴う糖輸送体の細胞内移動 耳下腺切片をアセチルコリン(ACh)又はエピネフリン(Epi)と加温振盪し、上述の方法で糖輸送体の動態を検索するとAChやEpiでは反応開始後1分でGLUT-1はICMよりAPMやBLMへ移動しAPMにおけるGLIUT-1の量が対象群より2〜3倍上昇した。ところが、GLUT-5には移動は認められず、SGLT-1はEpiでは反応開始後5分でICMよりAPMへの移動が認められた。 3) BLMにおける糖輸送体量の測定 耳下腺切片をAChと加温振盪後BLMを調製し、サイトカラシンBとの結合実験に供した。AChと反応させたBLMにおいてはKd値は対照群と有意の差が認められなかったが、Bmax値は増量が認められた。 4) 刺激に伴う糖輸送体の細胞内移動の阻害 GLUT-1のAChによる移動はサイトカラシンDで前処理した切片では認められずこの移動へのアクチンフィラメントの関与が示唆された。また、スタウロスポリンやH-7で前処理した切片でもこの移動は認められず、細胞内移動過程でりん酸化が関与していることを示唆した。
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