我々が開発していた、複製開始領域であるoriPに様々な部分欠失を持つが機能を維持しているmini-oriP EBVベクターに、テトラサイクリンによって調節が可能な発現ユニットを組み込み、細胞に毒性をもつ遺伝子を1種類のベクターとして導入するだけで、調節性に細胞に導入・発現できるプラスミドベクター、pOS-Tetの構築を試みた。これにより、過剰発現が細胞にとって高い毒性をもつような、現在では解析の難しい遺伝子の機能解析を、簡便に行うことが可能になることが期待された。 まず初めに構築したpOS-Tet4では、ドキシサイクリンの有無によって10倍以上のマーカー遺伝子の発現誘導が見られた。しかし実際に遺伝子解析を行う場合を想定すると、より高い発現差を実現できることが望ましい。そこでこのベクターにいくつかの改良を加えることにより、pOS-Tet5、pOS-Tet7を構築した。ドキシサイクリンの有無による発現レベルの変化はpOS-Tet5で20倍以上、pOS-Tet7では30倍以上であり、改善の効果が認められた。続いて、発現を抑制した状態から、発現を誘導した状態に変化するのに要する時間を解析したところ4日以上かかることが判明した。現在、より迅速に遺伝子発現を誘導できる改良型を構築中である。 これと平行して、神経変成疾患であるポリグルタミン病の原因遺伝子の1つであるMJD1を、ヒト神経様細胞に誘導性に発現することにより、その細胞死の分子機構を解析できるような実験系を構築した。 本研究で開発したベクターをもとに、遺伝子導入マウス体内でドキシサイクリンにより自由に導入遺伝子を発現させることが可能なベクターの開発を試みている。
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