ヒトニフェジピン(以下NF)誘発性歯肉増殖症におけるセリンプロテアーゼメダラシン(以下Med)の役割について検討するために、NF誘発性歯肉増殖症を有する患者(R群)5名と、対照として同薬剤を服用しない慢性辺縁性歯肉炎患者(ND群)5名および臨床的健康歯肉を有するう蝕症などの患者(Control群)5名を用い、Med特異抗体を用いて免疫染色を施し、Med陽性細胞の頻度および分布を検討した。その結果、R群の方が他群よりMed陽性細胞の頻度が有意に高く、歯肉結合組織全体に散在的に存在し、特に結合組織深部の血管周囲に多く認められた。これに対し、ND群ではポケット上皮直下に集中して認められた。Med陽性細胞は主として好中球であるが、R群では一部のマクロファージにおいても認められた。これらの所見より、Medは本疾患においてなんらかの重要な役割を果たしていることが示唆された。次に、同疾患におけるMedと増殖因子との関連性を解明する目的で、歯肉増殖と深い関連があるとされる線維芽細胞増殖因子(以下FGF)-2、血小板由来増殖因子(以下PDGF)-Aの抗体を用いた免疫組織学的検索を行い、その保有細胞の組織内分布をMed陽性細胞の分布と比較検討した。その結果、抗FGF-2抗体陽性反応はR群の炎症性細胞浸潤の強い領域で多く見られ、同部におけるMed陽性細胞の分布と類似した所見が得られた。一方、抗PDGF-A抗体陽性反応は弱く、同保有細胞は散在的に分布していた。これらのことから、NF誘発性歯肉増殖症において、MedとFGF-2および炎症性細胞浸潤に何らかの関連性があることが示唆された。今後、抗Med抗体と抗FGF-2抗体を用いた二重染色を行い、両因子の関係をさらに詳しく検討する予定である。
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