研究概要 |
静脈麻酔薬のプロポホールは,麻酔臨床で多用されているが,その作用機序の全容は明らかでない。申請者は,これまでに,脳微小透析法を用いてプロポホールはベンゾジアゼピン系静脈麻酔薬のミダゾラムと同様に,ラットの中脳辺縁系ドパミン性神経の終末領域である側坐核において,ドパミン遊離を減少することを明らかにした。 側坐核のドパミン遊離の減少にはGABA_A-ベンゾジアゼピン受容体の関与が指摘されているので,平成11年度はまず、プロポホールが側坐核のGABA遊離に直接影響を及ぼすか否かについて,検討を行った。無麻酔非拘束下でGABA量を脳微小透析法により測定し検討を行った。その結果,プロポホールは,側坐核のドパミン遊離の減少を誘発する5,10mg/kgいずれの用量においても,投与後4時間にわたって側坐核GABA遊離量に著変を引き起こさなかった。 プロポホールは,麻酔臨床においてミダゾラムとしばしば併用されるので,つぎに,両薬物の併用投与が側坐核ドパミン遊離に及ぼす効果について検討した。その結果,それぞれ単独ではほとんどドパミン遊離を減少しない用量であるプロポホール2.5mg/kgとミダゾラム0.075mg/kgとを静脈内に併用投与すると,両薬物投与175分後に側坐核のドパミン遊離は著明に減少した。 以上の結果から,プロポホールの静脈投与によって起こる側坐核ドパミン遊離の減少は,同部位のGABA遊離を介したものではないことが示された。また,プロポホールとミダゾラムの併用は,側坐核のドパミン遊離を協力的に減少させ,麻酔臨床での効果と平行していることが示された。
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