昨年度はインビボでのイオノトロピック型グルタメートアゴニストであるN-メチル-D-アスパラギン酸シグナルに橋・延髄内の転写制御因子Activator protein-1(AP1)が応答することを明らかにした。本年度は、イオノトロピック型グルタメートレセプターの異なるサブタイプのアゴニストであるkainic acid(KA)シグナルに応答する転写制御因子の検索を、特異的プローブに対するDNA結合能を指標として試みた。KAをマウス腹腔内に投与2時間後の時点について、橋・延髄より細胞核抽出液を調製し、その細胞核抽出液中のロイシンジッパー型転写制御因子の一つであるAP1のDNA結合能をポリアクリルアミド電気泳動法により測定した。その結果40mg/kgの用量では、約2倍の有意なAP1プローブに対するDNA結合能増強が観察されたのに対して、AP1同様ロイシンジッパー型転写制御因子であるcAMP response element binding protein(CREB)とc→MycのDNA結合能には、いずれもKA投与に伴う有意なDNA結合能の変動は認められなかった。また、KA40mg/kgはけいれん誘発量であるが、非けいれん誘発量である20mg/kgを投与した場合には、いずれの転写制御因子にもKA投与に伴うDNA結合能の著明な変動は見られなかった。上記成績はKAシグナルに対して橋・延髄内AP1が選択的に応答している可能性を示唆するものと思われる。今後、培養三叉神経節あるいは培養歯髄細胞内転写制御因子についても両グルタメートアゴニストシグナル応答性の検索を行う予定である。
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