破骨細胞は骨吸収を担う細胞であり、この骨吸収周期において骨基質に強く接着している骨吸収状態と次の吸収の準備ために動いている移動状態を絶え間なく繰り返している。この内、骨吸収状態の破骨細胞は骨の無機成分を溶解するためにプロトンを有機成分溶解のためコラーゲン分解酵素を骨表面に放出する。そこで、この骨吸収状態での骨吸収機能そのものであるプロトン放出能が種種のリン酸化によってどの様に調節されているかを調べる一環として、最初に吸収状態と移動状態におけるH^+放出能の違いを調べた。さらに、骨吸収を抑制し、cAMP依存性のリン酸化酵素(PKA)を活性化するカルシトニンのH^+放出能への効果について検討した。 吸収状態の破骨細胞のH^+放出能は移動状態に比較して活性化されており、これに伴って吸収状態では細胞内pHが高くなると考えられた。次に、H^+輸送体の阻害剤の効果を調べた結果、移動状態にはNa^+/H^+交換輸送体がH^+放出機構として機能しているが、吸収状態にはNa^+/H^+交換輸送体だけでなく、液胞性のプロトンポンプによってもH^+放出能が規定されていると考えられた。さらに、カルシトニンは吸収状態の破骨細胞に対してのみリン酸化を介して液胞性プロトンポンプを抑制する可能性が示唆された。また、チロシンリン酸化酵素(PTK)の阻害剤は、吸収状態、移動状態にかかわらずH^+放出能を抑制した。 以上の結果より、骨吸収状態のプロトン放出活性能は液飽性プロトンポンプが関与し、これはカルシトニンにより抑制されることが解った。さらに、この液胞性プロトンポンプの調節には、PKAやPTKが関与している可能性が示唆された。
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