1998年度は顎関節の動態撮影を行い、撮影条件を検討した。CTは東芝製Xvigor Realを使用し、同機が保有するCT透視(CT-fluoroscopy)の機能を使用した。被曝線量低減のためエックス線管電流を30mAとし、管電圧を120kV、FOVを180mm、スライス厚を2mmとした。マトリクスは256×256で6コマ/秒の動態撮影を行った。顎関節に症状を有する顎関節内障症例3例、顎関節に症状のないボランティア2名の撮像データを検討した。 (1) 撮像方法と基準面の検討:開閉口運動を1往復に10秒程度かけて滑らかに行えるよう被験者に指導した後、CT-fluoroscopyの機能により開閉口運動4〜5回分の連続撮影を行った。頭位は仰臥位で顎を引き気味にすると開口時に頭がのけぞり頭蓋に対する撮像角度が変化してしまうので、顎をあげ気味に設定する必要があった。開閉口運動時の左右の協調性を正確に評価するために、左右の断面のズレを事前に試験的に撮影し頭位を修正しておく必要もあった。撮影基準面は再現性を考慮しフランクフルト平面と咬合平面とを比較したが、下顎頭が連続して観察が容易なのは後者であった。断層面の高さは下顎頭が最大断面積となるよう位置決め画像上で設定したが、その決定までに数回の試行錯誤が必要であった。(2)顎関節に症状のないボランティアと顎関節内障症例との比較:ボランティアでは、下顎頭の前方への移動は左右とも同等の速度やタイミングであった。片側性の非復位性関節円板前方転位症例では、ロック症状を生じる開口量に達するまでは、開口初期には円板転位側の方が非転位側より早く前方移動を開始する現象が認められた。また軟組織表示では関節後部組織の伸縮が確認でき、非復位性転位の関節では後部組織の過度の伸展が確認できた。なお、欠点として6コマ/秒と時間分解能が高くないため、開閉口の途中の速い動きに対しては二重化したような偽画像が認められた。
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