研究概要 |
1999年度は、(1)昨年に引き続き、開口障害を主訴とする症例の動態撮影を行い、加えて(2)健常ボランティアによる嚥下運動の動態観察を行った。CT撮影装置は昨年同様であり、東芝製Xvigor Realを使用し、CT透視(CT-fluoroscopy)の機能を利用した。管電流30mA・管電圧120kV、FOV180mm、スライス厚2mmとした。マトリクスは256×256で6コマ/秒の動態撮影を行った。開口障害を主訴とする症例への応用では、両側性筋突起過形成症例に対しては、開閉口運動を患者に指示しつつ撮影を行った。開口時に両側の肥厚した筋突起と肥厚した頬骨弓内側面とがわずかな簿い軟組織を介して衝突し開口障害を呈していることが明瞭に観察された。しかし、通常の断面画像を越える情報は得られなかった。(2)右顎関節の非復位性関節円板前方転位症例では、開口初期は左右とも下顎頭が同等に動き始めるが、右側が先に前方滑走が制限され左側は引き続き前方への滑走を続けること、また軟組織条件では下顎頭の前方滑走を抑制する転位した関節円板を指摘可能であり、後部組織の過剰な伸展が観察された。しかし、いずれも早い動きに対しては時間分解能が不足し画像が二重化したり、画像のコントラストが低下し関節円板や後部組織などの軟組織の詳細を評価するには不十分であった。健常ボランティアの嚥下運動の動態観察への応用では、ボランティア3名に対し仰臥位で唾液の嚥下を可能な限り早く繰り返し行うように指示しつつ撮影を行った。咽頭腔の横断面における形態変化は評価可能であったが、喉頭の上下的な動きについては指標となる解剖構造を同一断面で追跡するのは不可能であり、上体を起こした状態で嚥下運動を撮影できない点からも、嚥下動態評価の基本とされるvideofluoroscopyとの照合は困難であることが示唆された。今回の研究の要旨の一部は、第40回日本歯科放射線学会総会(1999年10月29日,横須賀市)にて発表した。
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