研究概要 |
現在まで,癌細胞の低酸素培養やTNFα刺激が,転写因子AP-1やSP-1の核内移行を介して,VEGF産生を亢進することをゲルシフトアッセイにより確認した. そこで,制御する目的転写因子をAP-1およびSp-1とし,おとり遺伝子,すなわちAP-1あるいはSP-1が認識する塩基配列(7塩基)と,その上下流のダミー配列8-10塩基により設計したオリゴヌクレオチドと,それと相補的なオリゴヌクレオチドを合成した.さらにアニールし,HPLC精製により二本鎖合成オリゴヌクレオチドを調製した(以下wild typeと呼ぶ).また,対照としてwildypeから数カ所の配列だけを変異させたmutantypeを調製した.また,HVJ-リポソーム法はウイルスベクターとしてセンダイウイルス(HVJ)を使用した.ニワトリ受精卵にHVJを注射し増殖させるHVJ培養系を確立し,採取した漿尿液からHVJを精製し,凝血活性による力価測定法を樹立した. さらに,数種類のリン脂質とコレステロールによるリポソームの調製に成功し,HVJ-リポソームの調製法を確立し,90%以上の導入効率を示す導入系を決定した. そこで,各種培養癌細胞にwild typeあるいはmutant typeのおとり遺伝子を導入し,それぞれ低酸素環境での培養,あるいはTNFαで刺激した細胞のVEGF mRNA発現を検討した.Mutant type導入細胞,Empty HVJ-リポソーム処理細胞は低酸素環境での培養や,TNFα刺激でVEGF mRNAの産生に影響しなかったが,wild type導入細胞は約40%にまで抑制された.また,培養上清中のVEGF量をELISA法で比較検討すると,各おとり遺伝子やEmpty HVJ-リポソームがVEGF mRNA産生に与えた効果と同様の結果を得た.
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