私は唾液腺腫瘍におけるEBウィルス、熱ショック蛋白の発現の検討を行った。唾液腺組織中におけるEBV、HSPの発現を免疫組織化学的、さらにin situ hybridization(ISH)法、PCR法、in situ PCR法を用いてEBVゲノムの検出を行い検討した結果、免疫染色では、Warthin腫瘍10例、好酸性腺腫1例の腺腫部分の細胞質にEBV蛋白、HSP70の発現が認められたが、多形性腺腫30例、腺腫様嚢胞癌4例、粘表皮癌3例、多形性腺腫内癌2例ではEBV蛋白の発現が認められなかった。PCRではWarthin腫瘍10例中10例(以下10/10と記す)、好酸性腺腫(1/1)、多形性腺腫(12/30)、腺様嚢胞癌(2/4)、粘表皮癌(2/3)、多形性腺腫内癌(1/2)が陽性であった。ISH法ではWarthin腫瘍の腺腫部分およびリンパ濾巣部リンパ球の核にEBER陽性細胞を認め、好酸性腺腫、多形性腺腫、腺様嚢胞癌、粘表皮癌、多形性腺腫内癌においてもPCR陽性例においてEBER陽性細胞を認めたが陽性細胞少数であり、BHLF陽性細胞は認められなかった。in situ PCRではISHにおいて陰性であった症例においてもシグナルが認められ、PCRと同様な結果が得られ、唾液腺腫瘍(Warthin腫瘍)においてEBV感染とHSP70発現に関連が示唆された。唾液腺、口腔疾患(腫瘍、粘膜病変)におけるEBV感染の広範な検索はなされておらず、今後の課題である。
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