研究概要 |
本年度は従来使用してきたNd:YAGレーザーに比較して高出力レーザー照射が可能なパワーパルスNd:YAGレーザー装置が開発されたため,このレーザー装置を使用し,以下の実験を行った. 1. ヒト単根抜去歯5歯の根尖切除を行った.パワーパルスNd:YAGレーザーを用い,照射条件を900mJ10ppsとして直径400μmのファイバーで導光し,注水下で根尖側3mmの根尖切除を試みた.その結果,Nd:YAGレーザーによる根尖切除は可能であり,平均照射エネルギー1785J,平均照射時間198秒を要した.肉眼的に根尖切除面には炭化を生じなかった. 2. パワーパルスNd:YAGレーザーを用いて各種歯科材料すなわち歯科用セメント,レジン,金属等にレーザー照射を試みたところ,金属に対する反応が非常によいことが判明した,そこで,ヒト単根抜去歯根管に(1)金属ポストを合着,(2)ガッタパーチャポイントを側方加圧根管充填,(3)Kファイルの先端3mmを意図的に根管内に破折,という3条件の根管内異物に対してレーザー照射による除去を試みた.(1)〜(3)の各群8歯に対して照射条件は900mJ10ppsとし,直径400μmのファイバーで導光し,水中にてレーザー照射を行った.その結果,金属ポストの除去は可能であり,平均照射エネルギーは6029J,平均照射時間は670秒であった.また,ガッタパーチャポイントの除去は可能であり,平均照射エネルギーは169J,平均照射時間19秒であった.破折ファイルでは除去可能な例が観察され,平均照射エネルギーは2853J,平均照射時間317秒であった.SEM観察によると根管壁象牙質にはレーザー照射により溶融したと思われる象牙細管が閉塞した像が観察された.
|