研究概要 |
歯髄細胞における炎症治癒の機序を明らかにするために,ヒト歯髄細胞のPrevotella intermedia LPSで誘導される炎症性サイトカイン(主に,IL-6とIL-8について)に対するIL-10およびIFN-γの影響を調べたところ,以下の結果を得ている. 1,LPS単独刺激による歯髄細胞のIL-8およびIL-6のmRNA発現とタンパク発現は,IL-10添加で抑制され,IFN-γ添加で増強された. 2,LPS刺激による歯髄細胞からのIL-10産生は,ELISA法では検出されなかった.一方,末梢血のIL-10産生は,LPSの濃度依存的に増大していた. 3,LPS刺激により,歯髄細胞表面上のIL-10レセプターの発現が誘導されるのに対して,IFN-γレセプターの発現は抑制された.一方,同刺激によるヒト皮膚線維芽細胞やB細胞の両者のレセプターは影響を受けなかった. 4,LPS刺激による細胞内シグナル因子NF-κBの活性は,IL-10添加により抑制されIFN-γにより増強された.また,NF-kBの核内移行に関与するIkB degaradation に対してIL-10は抑制的に,IFN-γは促進する方向に働いた. 以上の結果から,歯髄細胞に対するIL-10とIFN-γの影響は,各々のレセプターおよび転写因子を介して調節されることが示唆された.このことより,両者は歯髄炎症に対して相互に調節しあい,病態の進行に関わっているものとおもわれる.
|