研究概要 |
グラスポリアルケノートセメントは、歯質に対して接着性を有しているが,その機構についてはいまだ十分に解明されていない。そこで,まず両者の界面の結合状態を明らかにするため,これまで一連の研究を行って来た。その結果,セメント液と歯質エナメルとの界面に渕難容性の塩が生成し,この塩の生成には,酒石酸の作用が大きく関与していると考えられた。 そこで今回まず、酒石酸の添加をほとんど認めない市販カルボキシートセメント(松風ハイボンドカルボキシレートセメント)泥を、エナメル粉末と反応させ、その赤外吸収スペクトルを分析した。その結果、我々がこれまでに確認したエナメル表層に生成する難容性塩に由来する1590cm^1のピークは認められず、遊離のカルシュウムイオンと反応した可溶性の塩を含むカルボン酸塩の非対称性伸縮の吸収帯が、1570〜1550cm^<-1>に認められるのみであった。また、水洗回数を増やしても、新たなピークは出現せず、エナメルのリン酸根の吸収(1090〜1040cm^<-1>、600〜560cm^<-1>)と、上記の可溶性の塩を含むカルボン酸塩の吸収帯の強度が減少した。これらのことから、酒石酸が作用しない場合は、水洗によってエナメル成分と伴に多くのカルボン酸塩が流出してしまうことがわかった。 また、FT-IRを用いたセメントの凝結反応の経時的分析では、セメント練和開始から4分後のスペクトルにおいて1380cm^<-1>付近の酒石酸カルシュウムの吸収、1460cm^<-1>付近のポリアクリル酸アルミニウム 1560〜1530cm^<-1>のポリアクリル酸カルシュウムの吸収が認められ、10分後のスペクトルにおいてはさらにポリアクリル酸塩の吸収が強く現れていた。
|