染色体の末端部に存在するテロメア配列を伸張するテロメラーゼの活性は、癌細胞に限らず活性化リンパ球にも認められ、免疫応答との関与が推測されている。また、根尖性歯周炎にはリンパ球を中心とした細胞浸潤が存在し、病変成立に重要な役割を担っている。そこで本研究では根尖性歯周炎の病態解析を目的とし、歯周炎局所のテロメラーゼ活性の検索を行った。 昨年度は難治性根尖性歯周炎の外科処置より根尖病巣を摘出し、全症例でテロメラーゼ活性を確認した。また、Ki6 7抗体による免疫染色により本酵素活性は病巣内に存在する一部の浸潤細胞と線維芽細胞によるものと考えられた。 本年度はヒト末梢血のリンパ球よりテロメラーゼ活性の検出を試み、歯周炎局所のテロメラーゼ活性と比較、検討し以下の結果を得た。 1.ヒト末梢血リンパ球は未刺激の状態ではテロメラーゼ活性はほとんど認められなかった。 2.ヒト末梢血リンパ球に抗原レセプターのシグナル伝達分子であるCD3抗体で刺激すると、刺激後約48時間でテロメラーゼ活性が認められ、その後徐々に活性は低下していった。 3.根尖性歯周炎のテロメラーゼ活性は全症例で認められたがリンパ球の活性化に伴うテロメラーゼ活性の70%から25%程度であった。 以上のことから難治性根尖性歯周炎の病巣局所に存在するリンパ球や線維芽細胞は種々の程度でテロメラーゼ活性を獲得し免疫応答を成立させていることが示唆された。
|