細菌に対する水酸化カルシウムの最小発育阻止濃度を測定するための感受性測定用培地の検討、および水酸化カルシウムの根管内分離細菌に対する最小発育阻止濃度の測定を行った。 1. 受性測定用培地の検討 細菌の薬剤に対する感受性の測定方法は大きく分けて拡散法と希釈法の2種類がある。そこで、予備実験としてこの2種類の方法を用い、それぞれ水酸化カルシウム濃度の違う培地を作製、細菌を接種し発育状態を検討したところ、拡散法では水酸化カルシウム濃度の違いによる阻止円の大きさの差は観察することができなかったが、希釈法を用いた場合は菌種間で発育する濃度の違いが観察することができた。そこで感受性測定用培地は希釈法を利用することにした。次に培地に加える水酸化カルシウム量を決定するために、強いアルカリの環境下でも発育する好アルカリ菌を用い、培地自体が変性しない範囲の水酸化カルシウム濃度を検索した。その結果、水酸化カルシウム濃度が10%をこえると細菌が発育する事ができない培地になることが明らかになった。そこで、感受性測定用に用いる培地の水酸化カルシウム濃度は10%から倍数希釈になるように、0%から10%までの10種類とした。 2. 水酸化カルシウムの根管内分離細菌に対する最小発育阻止濃度の測定 感染根管内から分離した細菌20菌種に対する水酸化カルシウムの最小発育阻止濃度の測定を行った。この結果、通性嫌気性菌の最小発育阻止濃度は、0.156から5.0%で、偏性嫌気性菌は0.156から2.5%であった。最も水酸化カルシウムに対して感受性の低かった菌は、Enterococcus faecalisで、最小発育阻止濃度は5%であった。
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