本研究では生体吸収性を持ち、かつ生体に対して為害性の少ない低融点ガラスを開発し、その生体内での溶解速度や為害性を評価するとともに、薬物徐放担体や骨充填材として応用することを目的として研究を行っている。 本年度は主としてリン酸塩ガラスの溶解特性を中心に研究を行い、以下の知見を得た。 (1) 広範囲の組成のNa_2O-CaO-P_2O_5系ガラスの溶解速度を蒸留水及び疑似体液中で行った。溶解速度はCaO成分の増加とともに急激に低下し、P_2O_5成分の増加とともに上昇した。疑似体液中の溶解速度は蒸留水中のそれより低かった。 (2) 同系ガラスのガラス化範囲を特定し、類似のNa_2O-BaO-P_2O_5系ガラスのガラス化範囲とほぼ一致した。これらのリン酸塩ガラスのガラス化範囲は同ガラスの構造から説明が可能であった。 (3) ヒト歯髄細胞を用いてNa_2O-CaO-P_2O_5系ガラスの細胞毒性試験を行い、細胞毒性とガラス組成及び溶解速度の間に関係が見られた。P_2O_5濃度が高い組成では細胞毒性が高く、またP_2O_5濃度が低い場合でも溶解速度の高い組成では細胞毒性が高かった。これはガラスの溶解による培地中のpH及びイオン強度の変化によると考えられた。
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