研究概要 |
チタンは生体親和性、耐蝕性に優れた材料として今日、歯科領域において多くの研究が行われ、インプラントや補綴物への臨床応用が進められている。前歯部への適応などを考えると、レジンや陶材による前装技術の確立も重要であるが、通法の金合金と陶材の組み合わせの焼付強さと比較して焼付け面の酸化した部位で剥離しやすいことが報告されている。チタンの審美歯科における利用に関して陶材焼付の焼付強さの更なる向上や、補綴物の適合の観点から陶材焼成時の酸化抑制が必要と考えられる。 本研究では放電加工機を用いて作製したチタン板に表面処理として金イオンスパッタリングを施すことにより酸化抑制をはかった。イオンスパッタリングの厚みを3条件(推定厚さ200Å、400Å、600Å)とし、これらに陶材の築盛、焼成を行なった。これらの試料に圧縮せん断試験を行い焼付強さを求めた。また、電子顕微鏡を用いた破断面の観察、エネルギー分散型X線分光法による破断面の元素分析も併せて行い破断部について検討を行った。これらのことより600Åの条件において剥離の原因と考えられる酸化膜の成長を抑制し、焼付強さの向上が認められた。高真空下において陶材の焼成を行い,高い焼付強さが得られたという報告やチタン表面にコーティングを施すことによって酸化の抑制が行えたという報告はあるが、陶材焼成への応用例として報告されていないため本研究は歯科臨床において十分な意義在るものと考えられた。
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