本年度は、パーキンソン病患者に見られるオーラルディスキネジアについて、下顎運動、軟組織運動といった複数の観点からその特徴を観察する目的で、以下の検討を行った。 1: オーラルディスキネジアを有する患者の下顎運動測定、解析システムの開発 オーラルディスキネジアの1病態である下顎不随意運動は、咀嚼運動と比べて運動範囲が小さく、不定形な運動を呈するので、咀嚼運動の解析に用いるパラメータは有効でない。そこで、下顎運動測定装置(ナソヘキサグラフ)から得た下顎運動の3次元データを、パーソナルコンピューターにて自動解析するプログラムを製作した。このプログラムは、3次元の座標軸原点を任意に設定できるもので、咬頭嵌合位を原点として設定可能な咀嚼運動と異なり、持続的で不定型なオーラルディスキネジアを定量的に評価することが可能となった。 2: 写真測量の原理を応用した軟組織三次元形態測定システムの開発 軟組織の運動を測定する際の測定点となる口角点、眼角点、鼻翼点などは、左右側に存在する。そのため、これら測定点の運動を左右対称性の観点から評価するには、運動のスタートラインとなる安静時の測定点の左右対称性を評価する必要がある。システムの開発に当たり、外部標点要素及び内部標点要素を解析的に求めるために、座標値が既知で、被写体周囲に立体配置された基準点が15個ある基準点を製作した。本基準点を写真の標点に使用することによって測定点の3次元座標は、この基準点群によって校正される座標系によって表すことができる。これを用いて、本システムの精度を、単写真標点時の中等誤差、基準点誤差、相対精度について、検討したところ、本研究における測定点の測定に十分は精度を有することが判明した。
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