本研究では、パーキンソン病患者に見られるオーラルディスキネジアの発現形態と補綴処置の効果について検討するために、以下のような検討を行った。 1:オーラルディスキネジアを有する患者の下顎運動測定、解析システムの開発 まず、下顎運動測定装置(ナソヘキサグラフ)から得た下顎運動の3次元データを、パーソナルコンピューターにて自動解析するプログラムを製作した。このプログラムは、3次元の座標軸原点を任意に設定できるもので、咬頭嵌合位を原点として設定可能な咀嚼運動と異なり持続的で不定型なオーラルディスキネジアを定量的に評価することが可能となった。 つづいて、軟組織の運動を測定する際の測定点となる口角点、眼角点、鼻翼点などの安静時左右対称性を評価する目的で、写真測量の原理を応用した、軟組織3次元形態測定システムを開発し、十分な精度を有することを確認した。 2:パーキンソン患者におけるオーラルディスキネジアの発現形態と補綴物の効果 前述したシステムにより観察したオーラルディスキネジアを、発現部位により口唇型、舌型、下顎型、混合型に分類し、(1)無歯顎患者について、適切に製作された全部床義歯の効果を開発したシステムを用いて評価したところ、多くの患者で補綴物の効果が認められた。また、(2)咬合支持のある患者に対しては、咬合拳上を行う各種スプリントを装着し、ディスオーラルディスキネジアの改善程度を評価したところ、咬合をロックするタイプより、自由な側方滑走運動を行えるタイプのスプリントにおいて、症状緩和効果が認められた。
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