近年、歯科医療の分野においても歯科材料・器具を介しての院内感染を防止するように努めてられている。高齢化社会への移行に伴い、需要が高まる義歯床は患者によるメンテナンスが耐久性および口腔衛生を左右する。現行の消毒・滅菌処理には、耐久性等に大きな影響をおよぼすものもあり、再検討する点があると思われる。本研究では、高い殺菌効果、安全性を示す強および弱電解酸性水を用いた義歯床に対する有効な殺菌処理の開発を目的としている。 加熱重合型レジンはアーバン(松風)、常温重合型レジンにはクイックレジン(松風)を用いて、メーカー指示に従って板状試験片(長さ30±l.0mm、幅30±1.0mm、厚さ3±0.2mm)を作製した。また、この試験片に粘膜調整材としてティシュコンディショナー(松風)を裏装した板状試験片(厚さ5±0.2mm)も作製した。BHI中で37℃、24時間培養したStaphy lococcus aureus 209Pを、生理食塩水で1.0×10^6個/mlに調整した菌液50ml中に浸漬した各試験片に対して、電解酸性水による処理を行った後、50mlの生理食塩水中に浸漬して30秒間超音波を施したものから1ml採取して普通寒天培地と混釈して37℃、24時間培養後、コロニー数を測定した。処理前ならびに蒸留水を使用した場合についても同様の試験を行った。試験は室温23±2℃、相対湿度60%中で3回ずつとした。各試験片の処理には、いずれも遮光・密閉容器中に保存した、調整後1時間以内のものを用いた。いずれのレジン板においても電解酸性水への1分間の浸漬により菌数は著しく低下しており高い殺菌効果を示し、さらに超音波洗浄の付加により無菌状態にまでなっていた。粘膜調整材を裏装した試験片では、レジン単独の場合よりも殺菌効果が低くなる傾向にあり、浸漬だけではなく超音波を付加する必要があることがわかった。現在、通法により作製した義歯床についても同様の試験を行っている。
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