研究概要 |
1. 目的 顎口腔系の運動能力は歯の欠損や義歯の状態などによって影響されるだけではなく,加齢,老化や全身的な運動能力とも関連するが,顎口腔系とそれ以外の運動能力との関連についての報告は少ない.すでに,健常有歯顎者10名(同意を得た者)および無歯顎者2名(同意を得た者)について音刺激に応じる下顎タッピング,手指のタッピング運動の定常性と運動軌跡のスムーズさを比較したが,本研究ではさらに多くの無歯顎者について全身的運動能力との関連を検討するにあたり,多点動作解析システムの精度検定を行った. 2. 方法 ノギス(最小表示量0.01nm,器差0.02mn,Mitutoyo社製)の本尺部とslider部に球型の光反射性標点を固定した.さらに,slider部には光反射性標点を3個立体的に配置した仮想点計測用のマーカーを固定した.ノギスを測定空間内に置き,slider部を任意の方向,間隔で約150nmの距離内を移動させながら,6台の高速度ビデオカメラで上下左右6方向から撮影した.そして,Data Station(Vicon370,Oxford Metrics社製)へ収集したデータをリアルタイムでWork Stationへ転送し,立体構築した.また2個の標点を設置した棒状のポインターを用いてslider部標点を指示し,仮想点データとして記録した.これらの標点の移動データと仮想点座標データを独自に開発した任意点挿入プログラム(nac社製)によって合成し,ノギス実測値とViconでの標点計測値および仮想点計測値を比較した. 3. 結果と考察 解析結果ではノギス実測値と標点の計測値は相関係数1.00,回帰直線y=0.999x+0.001,またノギス実測値と仮想点計測値は相関係数1.00,回帰直線y=0.998x-0.08であった. 本計測システムは,コードレスの標点と小型軽量のマーカーの使用により非接触で被験者の負担が少なく,皮膚上の運勤経路および顆頭や臼歯列などの仮想点の運動の解析にも十分な精度をもつことが示唆された.
|