市販光重合型レジン4種の吸光係数および臨界照射量を、ランベルトの法則を応用した式から算出した。実験に用いたレジンのうち、1種だけが吸光係数と臨界照射量の関係において、吸光係数の増加と共に臨界照射量が増加する傾向を示した。また、光照射中の透過光強度を測定した結果、他のレジンが照射時間の経過と共に緩やかに増加するのに対し、このレジンだけは照射直後の数秒間で最高値を示し、その後緩やかに減少する傾向を示した。これらの結果から、吸光係数、臨界照射量および光透過性は、重合に伴うフィラーおよびマトリックスレジンの屈折率の差に影響されると考え、光重合レジンの各成分を分離し、これらの重合に伴う屈折率の変化を測定することによって、光重合型コンポジットレジンの重合性に及ぼす影響を調べた。 通法に従って各光重合レジンをフィラーとマトリックスレジンに分離し、光照射中にマトリックスレジンを透過する光強度を測定した。全ての光重合レジンで、透過光強度は光照射直後に上昇した後、ほぼ一定になる傾向を示した。これより、重合に伴う光透過性の変化はマトリックスレジンだけでなく、フィラーの屈折率も関与していることが示唆された。マトリックスレジンの屈折率は、モノマーが重合によってポリマーになると高くなり、これに伴い、フィラーとマトリックスレジンの屈折率の差が変化し、その界面における光の散乱量が変わることによって光透過性が変わったものと考えられる。そこで、フィラーおよび重合前後のマトリックスレジンの屈折率を測定した。本研究で使用した光重合レジンのマトリックスレジンの屈折率の変化は、全ての材料において、重合と共に上昇していた。重合に伴う光透過性の変化が他と異なる傾向を示したレジンでは、フィラーの屈折率が他のレジンよりもモノマーの屈折率に近く、重合に伴ってポリマーとの差が大きくなったことによるものと考えられる。これに対し、他のレジンは重合に伴い、その差は小さくなっていた。 よって、マトリックスとフィラーとの屈折率の差は、レジンの重合性および光透過性に最も影響を及ぼす因子であることが示唆された。
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