研究概要 |
1. ゼラチン含有灰分の化学的解析 牛由来と豚由来のゼラチンそれぞれを約1000℃で加熱し,少量の灰分を得た.これらの成分をX線回折により比較したところ,牛由来のゼラチン含有灰分はカルシウムを主成分とし,ほかに約1.4%のケイ素が含まれていたことが明らかとなった.また,豚由来のゼラチン含有灰分でもカルシウムが主成分であったが,そのほかに,リン,鉄,ケイ素が含まれていた. 2. 動物実験による骨補填試験 ラット頭蓋骨に欠損部を作製し,これにゼラチン含有灰分を補填し,経時的に病理組織学的検索を行った.その結果,牛由来のゼラチンを高温で加熱した灰分の補填例では,補填した材料が新生骨内に見い出され,骨伝導性に優れていることが示唆された,さらに,この補填例では炎症反応が軽微であり,補填部位からの材料の流出はみられなかった.一方,焼成温度が低いものや豚由来のゼラチン含有灰分では骨伝導性が乏しいものであった.また,炎症反応(異物反応)も強く,補填部位からの材料の流出が認められた. 3. 培養細胞を用いた検討 培養骨芽細胞を用いた試験では,牛由来と豚由来のゼラチンそれぞれから得られた灰分を培養液に0.01%添加して行った.その結果,いずれの灰分も細胞性や壊死を招くことはなかった.しかし,牛由来の灰分を添加したものではDNA量やアルカリフォスファターゼ活性が灰分無添加の対照に比べ低い値を示した.このことから,牛由来の灰分を培養細胞に添加した場合,骨芽細胞の活性を減弱させていることが示唆された.また,豚由来の灰分を添加したものでは,ハイドロキシアパタイトを添加した場合と類似した傾向を示した. 以上のことから,今後動物実験と培養細胞による試験の結果が相反することに着目し,実験条件を再考し,検索項目を増やす予定である.
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