咬筋や内側翼突筋など閉口筋による張力の影響があり、下顎頭に直接負荷がかかると考えられる下顎枝高の延長を行い、顎関節構造体における変化を観察するために本研究を施行した。日本白色種家兎(雄性3Kg)を使用し口外法により片側の下顎枝の垂直骨切りを行った。手術は顎下部より咬筋を剥離して下顎枝外側面を広範に露出し、サージカルバーにて骨切りを行った。実験群ではこの後下顎骨体部を5mm下方に牽引した状態で、骨離断部を0.3mmステンレスワイヤーにて結紮固定した。すなわち片側の下顎枝高を5mm延長した。手術後、1週から12週で10%中性緩衝ホルマリンにて潅流固定し、両側の顎関節を含む下顎枝を一塊として摘出した。この間における顎関節の経時的形態変化を観察した。シャムオペ群として口外法による片側の下顎枝の垂直骨切りのみを行い骨片固定をしない群を設定した。コントロール群として未処置の家兎を用いた。 本年度は顎関節の形態変化の観察に先立ち、家兎の術後の体重変化について示す。雄性3Kgの日本白色種家兎は生後およそ16から20週であり青年期に相当し、コントロール群では週令が増すごとに体重が増加する。またシャムオペ群では下顎頭と歯列間を離断したが術後に目立った体重減少はみられなかったが、実験群では術後1週間で著明な体重減少がみられ、2週目より体重の回復がみられた。これは実験群では術後一時的な摂食障害が生じたことを示唆し、顎関節に対してもストレスとなっていることが推測される。顎関節組織の組織学的検索は次年度に報告する。
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