口腔扁平上皮癌組織、前癌病変さらに転移巣組織を用いて、CD82遺伝子の発現状況と癌の悪性度(易転移性、増殖様式、組織分化度等)との相関を検討するため、以下の研究を行った。 1) すべての試料よりDNAを抽出し、凍結保存した。それぞれの組織の一部をHE染色、ならびに免疫組織染色(ABC染色)のために、10%ホルマリンで固定した。 2) 抗CD82抗体を用いて、ABC染色を行ない、CD82蛋白の発現状況を調べた。 3) PCR-SSCP assay、PCR-Direct sequencingにより、CD82遺伝子の構造異常を検索した。 以上の実験により以下の結果を得た。 1) CD82i遺伝子蛋白の発現状況は、正常に発現しているもの、発現が減寂しているもの、全く発現がみとめられないものの3群が認められた。リンパ節転移を有するものほど、また、転移組織においてその発現減弱が認められ、CD82は前立腺癌と同様に口腔癌においても重要な役割を演じているものと考えられた。 2) しかし、PCR-SSCP assay、PCR-Direct sequencingによってもCD82遺伝子の構造異常の検出率は非常に低率で、必ずしも、構造異常によりCD82遺伝子の発現が制御されているわけではないことが明らかになった。 今後の研究においては、メチレーション等の発現調節機構に焦点をあてて研究を進める予定である。
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