研究概要 |
口腔扁平上皮癌における細胞外基質に関する研究では,細胞型フィブロネクチン(cFN)と血漿型フィブロネクチン(pFN)の口腔扁平上皮癌間質における分布に相違が認められた。pFNが広く濡浸性に間質に存在するのに対してcFNは一部の癌細胞群周囲に局在する傾向があった。そこでcFNの細胞接着因子としての性状を探る目的で,過去10年120検体の癌患者リンパ節転移とCFNの局在について検討した。その結果cFNの発現とリンパ節転移には有意な相関は認められなかった。次いでFNレセプターであるインテグリンの局在を正常上皮細胞,癌細胞について検討することとした。現在までのところインテグリンα5β1は上皮系細胞の胞体に多く局在するものの,上皮系細胞の性状とその発現に特別な関連を示しておらず,またcFNと特異的に結合し存在することはないようである。現在はさらにその他の接着分子(E-カドへリン.CD44)について検討を加えているところである。一方癌抑制遺伝子の変異に関する研究では,当初癌抑制遺伝子p53のpoint mutationを検出する方法としてPCR-SSCP法を利用することを検討していた。検体としてパラフィン包埋したものを利用した場合DNAの増幅が上手くいかず,またいたずらに増幅を繰り返せばアーキファクトによるpoint mutationが増えてしまうことがわかった。そこで検体を新鮮摘出組織あるいは血液とし,p53のcDNAあるいはgenomic DNAからダイレクトシークエンス法によるmutationの検出へと実験方法をシフトしつつある。
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