安定した生体硬組織再建のためには、骨髄間質中に存在している間葉系幹細胞や骨原性細胞を有効に活用することが必要である。しかし、これらの細胞に対する有用なマーカーがなく細胞の有効な選別、分離は行われていない。我々は、骨髄間質細胞の造血支持能と骨形成能との高い相関に着目し、造血因子の発現が高骨形成能を有する細胞の選別、分離に有効なマーカーとなり得るかどうかの検討を行った。 骨欠損部への腸骨海綿骨移植あるいは外科的矯正手術時に得られたヒト骨髄間質細胞の培養系よりクローニングシリンダー法にて88個のクローンを得た。これらの無作為に選択した25クローンよりpolyA^+RNAを回収し、RT-PCRを用いて、各種造血系因子(顆粒球コロニー刺激因子、マクロファージコロニー刺激因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、肝細胞増殖因子、インターロイキン6、血管内皮増殖因子)の発現を検索したところ、クローンごとに発現パターンの差が確認された。次に、各クローンを10%FBS、5mMβグリセロリン酸および10^<-8>Mデキサメサゾンを含むαMEMで培養を行い、von Kossa染色にて石灰化の評価を行った。この結果、血管内皮増殖因子の発現と石灰化度との間に正の相関性があることが分かった。 さらにこれらのクローンのin vivoにおける骨形成能につき評価するために、ハイドロキシアパタイトを担体としてSCIDマウス皮下に移植して、8週間後に取り出した。ヘマトキシリン・エオジン染色にてその移植細胞の様子を観察した。クローン間で明らかな差異は認められなかった。以上の結果より、in vivoにおいての評価はさらに検討が必要だが、血管内皮増殖因子の発現と骨髄間質細胞の骨形成能との相関性が示された。
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