1.電気生理学的検討 頸神経ワナ切断によるオトガイ舌骨筋枝からの遠心性神経放電の変化を観察したところ、舌下神経本幹切断によって嚥下反射時の遠心性神経放電の集中発火は消失したものの、持続性神経放電は残存した。次に頸神経ワナを切断すると、放電数の急激な増加を認めたが、60秒後に頸神経ワナ切断前の放電数レベルに戻った。 続いて、頸神経ワナの末梢側切断端へ電気刺激を加え、オトガイ舌骨筋枝からの遠心性神経放電の変化を観察すると、刺激電圧の増加とともに誘発される放電数も増加した。また、刺激電圧と刺激間隔を固定し極性を逆転させると、正の刺激電圧では刺激に一致して神経放電が著明に増加し、負の刺激電圧では刺激に一致して神経放電が抑制され、刺激終了10〜20秒後に刺激前の放電数のレベルに戻った。 2.形態学的検討 オトガイ舌骨筋枝の中枢側切断端にhorseradish peroxidase-wheatgerm agglutinin(HRP-WGA)を注入した後、頸神経ワナと舌下神経本幹の吻合部からオトガイ舌骨筋枝のHRP-WGA注入部位までを摘出し、HRP標識細胞を検索した。その結果、内側枝と外側枝の分岐部付近に平均2.2個、合計11個の標識細胞が観察され、この標識細胞は末梢神経内に存在するニューロンの細胞体である可能性が高いと考えられた。 以上の実験結果から頸神経ワナ経由のオトガイ舌骨筋を運動支配するニューロンは舌下神経本幹内の神経細胞とシナプス接合していることが示唆された。
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