歯周疾患の発症と成立には、骨吸収や組織の破壊などの炎症性作用を有するサイトカインが強く関与しており、これらのサイトカインは多くの炎症物質の強力な誘導因子であり、本疾患患者の歯周組織にきわめて強く発現していること、歯周病原性細菌の構成成分は、本疾患患者の歯周組織のマクロファージや好中球に作用して、骨吸収刺激作用などの生物学的活性を有するサイトカインの産生を誘導することなどが報告されている。 今回の研究目的は、Porphyromonas gingivalis(以下P.g.)などの歯周病原性細菌によって、IL-1βなどのサイトカインが分解されたり、活性が低下したりするかといった直接的な相関関係を調べることであった。 P.g.をTSV培地で培養した後、細菌を含まないように遠心・ろ過した培養上清に、最終濃度が0.5〜2μg/mlとなるようにヒトリコンビナントIL-1β又はIL-6を加えて、4時間毎に一定量を回収しながら37℃で24時間インキュベートした。このサンプルをSDS-PAGEによって分離した後、western blot法によりメンブレンにトランスファーして抗IL-1β又はIL-6モノクローナル抗体を用いて反応させたところ、IL-1βの場合もIL-6の場合も培養時間の長いサンプルほど反応が低下し、P.g.の培養上清によってIL-1βやIL-6が分解されることが示された。このことは、歯周局所において、P.g.などの歯周病原性細菌がある種のサイトカインを分解・不活化することによって、そこに構築されていたサイトカインネットワークを混乱させる可能性があることが示唆された。
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