小児歯科・障害者歯科の臨床で幼若永久歯の外傷に遭遇する機会は多いが、歯髄壊死の徴候を早期に発見することが困難なため、歯内療法の開始が遅れて保存不可能となり小児期に抜歯を余儀なくされることもある。本研究は、実験的に再植した幼若永久歯の経時的な歯冠色変化と歯髄組織所見を対応させることにより、歯冠色から歯髄生死判断が可能かどうかを検討することを目的としている。平成10年度は、資料管理用データベースの構築準備および動物実験(予備実験)を行った。まず資料管理用データベースの構築準備として、歯科臨床で多用されているニコン社製接写用レンズを装着した デジタルカードカメラ(富士写真フィルム社製DS-560)でヒト成人の上顎切歯を撮影し歯冠色記録とする。この画像資料は、デジタルカードカメラにセットしたイメージメモリーカードに記憶されるが、PCカードリーダーを介して、パーソナルコンピューターに読み込ませた。現在、経時的に蓄積されていくデータの管理のための基本ソフトウェアーを開発中であり、これを11年度の動物実験で活用する予定である。また、当初は動物実験(幼若永久歯の実験的再植)はビーグル犬の上顎永久切歯(単根歯)で行う計画であったが、費用・実験期間が縮小したことにあわせて、ラットの上顎臼歯(複根歯)に変更する予定である。ただし再植実験が数多く報告されている前者に比べ、後者は実験手技が難しいため、変更可能かどうかを探るために10年度に数例で予備実験を行い、検討中である。
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