研究概要 |
Waldoの方法によりラットの歯を実験的に移動させ、歯周組織のBMP-2,4,7の遺伝子発現をin situハイブリダイゼーション法を用いて経時的に観察した。その結果、歯の移動時に移動歯の歯根膜線維芽細胞、骨芽細胞がBMP-2,4,7のmRNAを二相性に強く発現することが示された。今回得られた結果は次のとおりである。 1, 静常時、すなわち歯の移動前には、ラットの臼歯部歯槽骨、歯根膜において、BMP-2,4,7mRNAを発現する細胞は殆ど認められなかった。 2, 実験的な歯の移動開始2日後にラットの移動臼歯の歯根膜線維芽細胞、骨芽細胞においてBMP-2,4mRNAの発現が認められた。その後一時減弱した後、9日、12日、15日後において再び同様の細胞にこれらの遺伝子の強い発現が観察された。BMP-4mRNAについても、歯の移動開始2日後に移動臼歯の歯根膜線維芽細胞、骨芽細胞において発現が認められ、同様に一時減弱した後、9日、12日、15日後において再び強い発現が観察された。 3, BMP-2,4,7mRNAの歯根膜線維芽細胞、骨芽細胞における発現は牽引側、圧迫側の何れにおいても観察され、またBMP-2,4mRNAを発現する歯根膜線維芽細胞の数は、BMP-7のmRNAを発現する歯根膜線維芽細胞に比べて少なかった。 以上の結果より矯正的な歯の移動に複数のBMPが関与していることが示された。今後、抗体染色を用いて、これらのBMPの蛋白発現の検討を行い、また各種BMP遺伝子の発現機構を検討するとともに、BMP蛋白の機能解析を行う予定である。
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