研究概要 |
北海道大学歯学部附属病院小児歯科に来院する患者より、乳歯および永久歯の歯根膜細胞/歯髄細胞を分離し実験に使用した。これら細胞とC57BL6マウス骨髄細胞との共存培養を行い、破骨細胞の誘導能の検討を行った。全ての細胞において破骨細胞の誘導が可能である事が明かとなった。従来骨吸収因子として考えられていたinterleukin-1 beta(IL-1 beta),IL-6,IL-11 mRNAsの発現の有無をRT-PCRで検討した。またosteoprotegerin(OPG)およびOPGLについても検討を行った。その結果、全ての細胞においてIL-1 beta,OPGLはcontrol時から発現は認められなかったが、IL-6,IL-11,OPGの発現は認められた。破骨細胞誘導時にもIL-1 betaの発現は認められなかったが、他の全ての因子の発現が認められた。歯根膜細胞/歯髄細胞では乳歯および永久歯で各因子のmRNAsの発現の有無に差異が認められなかったため、OPGおよびOPGL mRNAの発現量の比較をNorthern Blottingでおこなった。その結果、永久歯ではOPGの発現が強く、○PGLの発現が弱かったが、乳歯では全く逆の傾向を示した。これは歯根膜細胞、歯髄細胞の両者において同様の結果であった。歯根膜細胞においてmechanical stressを与えて培養した場合、OPGLの発現が誘導されるかどうか検討を行った結果、乳歯および永久歯でmRNA発現の誘導が認められた。 以上の結果から、OPGおよびOPGLが歯根膜細胞/歯髄細胞で発現し、歯根吸収における破骨細胞の誘導に関与すると共に、乳歯の歯根吸収にも関与する可能性がある事が明らかとなった。また機械的刺激によってもOPGLの発現が誘導される事から、矯正治療時に生じる歯根吸収にも関与する可能性も考えられた。
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