研究概要 |
片側咀嚼の特徴を調べるために、まずはじめに健常者18名を対照群被験者として異なった大きさの規格化された食品(5g,10gのグミゼリー)を片側臼歯部で咀嚼させ、その時の側頭筋と咬筋の咀嚼筋活動と左右の下顎臼歯部と顆頭部の運動を光学系非接触式3次元6自由度顎運動および筋活動測定装置ナソヘキサグラフシステムを用いて同時記録した。その結果、咀嚼側の顆頭部はほとんど被験食品の大きさの影響を受けず咀嚼側の大臼歯部は被験食品の大きさに対応していた。さらに、咀嚼側の側頭筋と咬筋の筋活動量も被験食品の大きさに対応して変化することを明らかにした。また、同様に自由咀嚼を行わせた時の両側の咀嚼筋活動と顎運動を調べ、上記片側咀嚼の特徴に基づいて解析した結果、健常者には偏側咀嚼の傾向は認められなかった。次に、患者群被験者として片側のみ顎関節症III型に分類され臨床症状や徴候に左右差の認められる思春期の女子5名について同様に調べた結果、患者群の総咀嚼回数は対照群と比べて少ない傾向を示した。しかし、患者群の総咀嚼時間は対照群と比べて長い傾向を、側頭筋前部の総咀嚼筋活動量に関して患側健側とも対照群と比べて大きい傾向をそれぞれ示していた。さらに、患者群の咬筋の総咀嚼筋活動量は側頭筋とは異なり、患側、健側とも、対照群とほぼ同じ値を示し、有意に高い偏側咀嚼傾向を示していた。最後に、顎関節症患者の睡眠時のブラキシズム癖を調べるために睡眠時ブラキシズムを自動計測解析するシステムをVisual BasicとFunction LibraryであるSignal Basic Lightを用いてパーソナルコンピュータ上に構築し、健常者10名を被験者として二日間調べた結果、ブラキシズム以外の顎顔面運動からブラキシズムのみを抽出する基準値を求めることが出来た。同様に顎関節症患者5名についても調べた結果、ブラキシズム癖の顎関節症発症への関与が本研究により示唆された。
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