研究概要 |
今回は、本年度の研究実施計画に基づいて、実験動物であるニホンザルにインプラントを固定源とした前方牽引装置を一定期間装着させ、上顎骨に直接顎外力を作用させる実験の遂行を目的とした。 1, モンキーチェアにおける飼育環境に適応した成長期(混合歯列期)の雄ニホンザルを選出し、1回目の手術として、上顎左右側の犬歯および小臼歯間の歯槽基底部にチタンマイクロスクリュー(直径1.0mm、セルフタッピング型)を用いて、直列2穴を90°に屈曲させたチタンマイクロプレートを骨表面上に固定した。インプラントの骨性癒着を含めた植立部の治癒のために1か月を経てから、2回目の手術として、直接牽引するためのフックとして用いるプレートの1穴を口腔内に露出させ、その周囲を縫合した。 2, 各実験用サルの頭部の形状に合わせた固定用レジンキャップと上顎歯列の幅に合わせた左右2ヶ所の牽引用ゴムリング装着部を有する即重レジン製の支持ホルダーを連結、接合し、実験用サルの後頭部および前額部に支点を求めて可撤式タイプで固定した。 3, 支持ホルダーの2ヶ所のゴムリング装着部から口腔内のプレート穴に、片側300gの牽引力を矯正用ゴムリングを装着して加えた。牽引方向は上顎咬合平面と平行にした。装置装着期間は6か月とし、頭部の支持装置、矯正用ゴムリングの牽引力の調整は週に2〜3回行った。 以上の手順、方法により、チタンマイクロスクリューのインプラントを固定源とした前方牽引装置により、成長期のニホンザルの上顎骨を直接前方へ6か月牽引することが可能であった。今後は本実験による前方牽引の顎整形力の効果についてX線写真や組織標本などにより検討を加えていく予定である。
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