細胞膜表面酵素は、炎症および免疫反応において重要な調節因子となることが多く報告されている。早期発症型歯周炎の発症および進行には好中球の機能異常が深く関与していることを示す我々の以前の論文から、好中球の機能を詳細に解析するため、細胞膜表面酵素に着目した。HL-60(前骨髄球)をDMSOで分化させた好中球を用いたところ、分化の過程において構造的にCD13は発現していてが、分化に伴いCD10が発現が誘導されることを見い出した。これら細胞膜表面酵素は、ある種の起炎物質を分解し不活化するため、これら活性物質による好中球の機能調節が細胞膜表面酵素により制御されている可能性が示唆された。また、LPS等の菌体成分で刺激することによりCD10の発現が急速に低下することから、細胞の活性化に伴い細胞膜表面酵素による細胞機能調節が巧妙に制御されていることを示唆するものである。 さらに歯周組織における炎症反応をより詳細に解析するため、歯周組織の主要な構築細胞である歯肉線維芽細胞(HGF)における細胞膜表面酵素の発現を調べた。HGFは、炎症および免疫反応に積極的に関与していることが知られており、我々もすでにLPS刺激によるHGFからのIL-8産生は、CD14に依存したメカニズムであることを明らかにしている(研究発表欄参照)。そして、HGFにおいて、IL-1および歯周病関連菌菌体成分により、Dipeptidyl peptidase IV(DPPIV)活性が誘導されることを見出し、その活性は細胞膜上に誘導されるCD26であることを明らかにした。その誘導は転写レベルで調節されており、新生タンパクの合成を必要とすることが解った。近年、ケモカインの多くはDPPIVに特異的に分解を受ける構造を有していることが報告されており、ケモカインを取り巻く炎症反応にHGFがいかに関与しているかを追求していく予定である。
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