研究概要 |
ヒト口腔由来上皮細胞培養系に歯周病関連細菌Eikenella corrodensを加えて刺激し,歯周病関連細菌の上皮細胞に対する侵襲機構を細胞生物学及び分子生物学的手法により解析を行った。すなわち細菌の刺激による上皮細胞の炎症性反応として,サイトカインやプロスタグランジンE_2(PGE_2)の産生量を定量し,さらにはサイトカインと,PGE_2の律速酵素であるシクロオキシゲナーゼ(COX)の発現をmRNAと蛋白の両レベルで経時的に解析を行った。その結果,上皮細胞からInterleukin(IL)-6,8の経時的な産生増強がmRNAと分泌蛋白の両レベルで認められ,さらにPGE_2とCOX-2の経時的な産生・発現増強も認められた。加えて,上皮細胞のサイトカイン・PGE_2産生ならびにCOX-2発現に対する細菌の付着因子の影響を検討するため,cell culture insertを挿入し,直接的に細胞と接触させない系を作製して同様に解析を行った。その結果,細胞と細菌が接触しない系においてもサイトカイン・PGE_2などの産生増強ならびにCOX-2の発現誘導が認められた。さらにE.corrodensの付着因子の1つであるレクチン様付着因子を有しない菌株でも同様な結果が得られた。以上から付着因子以外に,サイトカイン・PGE_2ならびにCOX-2の産生・発現を誘導する物質が,細菌から分泌されていることが示唆された。次に,DMEM中で培養した培養液のみで上皮細胞を刺激すると,上記と同様の産生・発現誘導が認められた。現在,細菌から分泌される誘導物質の特性を調べると同時に,歯周ポケット上皮細胞を培養して3次元立体培養系を確立し,歯周病関連細菌により惹起される上皮細胞の炎症性反応の上皮下への波及機構を解析することを試みている。
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