T細胞はT細胞レセプターを介して抗原提示細胞上の抗原ペプチドを認識することにより活性化する。一方、主要な歯周組織構成細胞である歯肉線維芽細胞(HGF)は、局所免疫応答や歯周組織破壊に関与している可能性が明らかとなってきている。近年、HGFをIFN-γで刺激するとHLA-DR発現が認められることから、HGFも抗原提示能をもつことが報告された。我々もHGFが産生するサイトカインのうちIL-1αはその主体が細胞画分IL-1αであり、このIL-1αはcell-cell contactによりその活性を伝達することを明らかにした。そこで今回、HGFにおけるIL-1α、ICAM-1およびHLA-DR抗原発現の誘導を検討した。さらに、HGFとT細胞との共存培養によるT細胞の接着能、増殖能、IL-2産生能を検討し、現在までに以下の結果を得た。 (1) IL-1βで刺激したHGFは、その細胞画分にIL-1αを産生した。さらにこれをmRNAレベルで確認した。 (2) IL-1βが誘導する細胞画分IL-1αは細胞の膜分画に多く存在した。 (3) IL-1βで刺激したHGFは、その細胞画分にICAM-1を誘導した。 (4) IL-1βが誘導するICAM-1は細胞の膜分画に多く存在した。 (5) IL-1βで刺激後、固定したHGF上で培養したT細胞の増殖は無刺激のHGFの場合と比較して時間依存的に増加した。 同様に培養上清中のIL-2量も上昇した。 今回の研究より、HGFが産生する細胞画分IL-1αあるいはICAM-1は細胞膜分画に多く存在し、cell-cell contactによりT細胞にその活性を伝達することで、T細胞の増殖およびIL-2産生を制御している可能性が示唆された。今後、HGFが産生する細胞画分IL-1α、ICAM-1さらにHLA-DRが単独あるいは相互的にどのようにT細胞活性化に関与しているかを検討していく予定である。
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