T細胞はT細胞レセブター(TCR)を介して抗原提示細胞(APC)上の抗原ペプチドを認識することにより活性化する。この過程でTCRはAPC上のMHCリガンドと結合してT細胞活性化のシグナルを伝達する。一方、主要な歯周組織構成細胞である歯肉線維芽細胞(HGF)はサイトカイン産生、接着分子発現また抗原提示能を有することなどが明かとなり、局所免疫応答や炎症反応に関与していると考えられている。我々もHGFが産生するサイトカインのうち1L-1αはその主体が細胞画分IL-1α(iclL-1α)であり、このiclL-1αはcell-cell contactによりその活性を伝達することを明らかにした。そこで今回、サイトカインによるHGFのicIL-α、ICAM-1およびHLA-DR抗原発現の誘導を検討した。さらに、HGFとT細胞との共存培養によるT細胞の接着能、増殖能、IL-2産生能を検討した。 その結果、(1)IL-1βで刺激したHGFはicIL-1αを産生し、これは細胞の膜分画に多く存在した。また刺激開始後12時間がピークであった。(2)HGFのICAM-1発現はIL-1βの刺激開始後24時間まで上昇した。しかし、HLA-DRは認められなかった。(3)IFN-γの刺激したHGFのHLA-DR発現は72時間で上昇した。(4)IL-1βおよびIFN-γで刺激後、固定したHGF上で培養したT細胞の増殖は無刺激のHGFの場合と比較して時間依存的に増加した。同様に培養上清中のIL-2量も上昇した。これらはicIL-1α、ICAM-1およびHLA-DRのそれぞれの発現時間における各抗体の添加によって抑制された。 今回の研究より、HGF上のicIL-1α、ICAM-1およびHLA-DRは。cell-cell contactによりT細胞にその活性を伝達することでT細胞の増殖、IL-2産生を各発現時間ごとに制御している可能性が示唆された。
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