インターロイキンー6(IL-6)は炎症や感染の際に、中心的な役割を持つサイトカインの一つで、多彩な生理活性を有している。我々は以前、主要な歯周組織構成細胞てある歯肉線維芽細胞および歯根膜線維芽細胞が、炎症性サイトカイン(IL-1β、TNF-α)の刺激により多量のIL-6を産生し、この産生は主としてT細胞が産生するサイトカインてあるIL-4、IFN-γやグルココルチコイドにより調節されていることを明らかにした。また、歯周病局所においてもその局在の増加が誌められていることから、歯周病における病態形成への関与が考えられている。現在、IL-6遺伝子の発現調節機構とレセプターを介したIL-6の細胞内シグナル伝達機構が、分子レベルで明らかにされつつあるが、間葉系細胞に及ぼすIL-6とIL-6可溶性レセプター(IL-6sR)の作用は明らかにされていない。そこで今回HGFとHPLFの機能に対するIL-6とIL-6sRの作用を知ることを目的として以下の研究を行った。 培養細胞は健康な歯周組織を有する被験者から、承諾を得た上て採取した歯肉片からヒト歯肉線維芽細胞(HGF)を、また、矯正治療上抜去した歯の歯根膜片からヒト歯根膜線維芽細胞(HPLF)をそれぞれout growthさせ、継代培養後、3-5代目の細胞を実験に使用した。 HGFとHPLFをそれぞれ、(1)rhIL-1β単独、(2)rhIL-1β+rhIL-6sR、(3)rhIL-1β+anti-hIL-6、(4)rhIL-1β+anti-hIL-6+rhIL-6sR、(5)rhIL-6sR単独、(6)rhIL-6単独、(7)rhIL-6sR+rhIL-6の各刺激条件下て培養後両細胞から全mRNAを抽出し、ノーザンプロット法にてIL-6mRNAの発現を検討したところ、(1)〜(4)の条件では、IL-6mRNAの発現が認められた。また、両細胞の核抽出物を用いたelectrophertic mobility shift assayによりNF-kB結合性が認められたのは、(1)〜(4)および(7)の条件である。さらに、(1)〜(4)の条件で刺激したHGFとHPLFの培養上清中のIL-6量をElA法で測定したところ(1)(2)の条件でIL-6産生量の増加が認められた。一方、(5)〜(7)の条件で刺激したHPLFのアルカリフォスファターゼ活性を酵素活性定量で測定したところ、有意な変化は認められなかった。
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