研究概要 |
初めにガングリオシドGM3の合成研究を行なった。種類の異なる含リン脱離基を組み込んだシアル酸とガラクトースを、化学選択的に前者を活性化することでカップリングさせ、その後グルコシルセラミド部を導入する計画を立てた。まず、シアリルホスファイトを糖供与体とした場合の活性化剤、溶媒、活性化温度の検討を行なった。BF_3・OEt_2を活性化剤とすると、プロピオニトリル中、-45℃で反応は進行したが、立体選択性は3:2であった。一方、TMSOTf、TfOHを活性化剤とすると、プロピオニトリル中では-78℃で反応し、9:1の立体選択性で望みとするα-シアロシドが優先して得られることが分かった。この結果からTfOHを活性化剤とすれば最初のカップリングが可能と考えられた。そこで2,6位をベンジル基で保護し、脱離基としてホスホロジアミダートを組み込んだガラクトースとの反応を行なったところ、収率72%、立体選択性86:14で目的とする二糖が得られた。ガラクトースの保護基をベンゾイル基に切り替えた後にグルコシルセラミドとのカップリング反応を行ない、収率72%で目的とする三糖を得ることができた。現在、最終的な脱保護を検討中である。 次に、GM3の合成研究の延長としてシアリルルイスX四糖部分の合成を検討した。アミノ基がフタロイル基で保護され、3,4位が無保護のグルコサミンを糖受容体とすると4位が位置選択的にグリコシル化されることが知られており、GM3合成で用いたシアリルガラクトース糖供与体との反応を行なったところ、収率74%で単一の異性体を得ることができた。グルコサミン3位へのフコースの導入はα-選択的に進行するものの収率に問題を残しており、現在条件を検討中である。
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