研究概要 |
我々は平成10年度においてガングリオシドGM_3の収束型合成法の開発を行なっている。テトラメチルホスホロジアミダートを予め組み込んだガラクトース誘導体を糖受容体、シアリルホスファイトを糖供与体としてプロピオニトリル中―78℃でTfOHにより反応を行なうと、ホスファイトのみが選択的に活性化され、目的とするシアリルガラクトース誘導体が立体選択的に得られることを見い出した。そこで今年度はこの知見を活用して6糖からなるシアリルルイスXガングリオシドの合成研究を行なった。まず、テトラメチルホスホロジアミダートを脱離基とし、グルコサミン誘導体を糖供与体、ガラクトース誘導体を糖受容体として"armed-disarmed"概念に基づくグルコシル化反応を行ない、9:1の立体選択性でβ-グリコシドを優先して得た。得られた2糖を塩化メチレン中0℃にてTMSOTfによって活性化することで、立体選択的にグルコシルセラミドユニットを導入することができた。グルコサミン部3,4位の保護基を除去した後、2位フタルイミド基の嵩高さを利用することで4位へ位置選択的かつ立体選択的にシアリルガラクトースユニットのグルコシル化を行ない、5糖を得た。最終段階でのグルコサミン部3位へのα-フコシル化は立体選択的に進行したものの低収率であった。種々検討した結果、ρ-クロロベンジルエーテルとして保護することで反応性を抑えた糖供与体を過剰量用いることにより87%まで向上させることに成功した。現在脱保護条件の検討を行なっている。
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