研究概要 |
抗菌,および抗腫瘍活性を有するkinamycin類の立体選択的全合成を,以下の戦略で達成することを目的とし,研究を行った.1)Kinamycin類のもつ4つの環のうち,不斉炭素を有するD環をbenzo[f]indenone(1)とDanishefsky-type diene(2)とのDiels-Alder反応で構築したのち,必要な酸素官能基を導入する.2)現在までに報告例のない,高度に酸素官能基化された1の効率的合成をめざす.1)については,1のモデル化合物であるindenoneと2とのDiels-Alder反応を行い,kinamycin類のBCD環に相当する1,4,4a,9a-tetrahydro-3-siloxy-9-fluorenone(3)を得た.3を酸処理して得たenone(4)は容易に空気酸化を受け9a-hydroxy体(5)を与えた.この5をsilyl enol etherとし,オスミウム酸化して4,9a-dihydroxy体(6)を得た.現在,6の1,4-還元,オスミウム酸化によるD環上のすべての酸素官能基の導入を検討している.2)については,1の前駆体であるbenzo[f]indanone(7)の合成のモデル反応として,1-naphtholを出発原料とし,7の酸素官能基が1つ欠如したbenzo[f]indanone(8)の合成を達成した.現在,すべての必要な酸素官能基を有する7の合成,および脱水素による1への変換を検討している.
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